一般葬儀と異なる家族葬の背景には高齢化社会

厚生労働省が2018年7月20日に公表した簡易生命表によると、2017年の日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性87.26歳で過去最高を更新しました。女性は世界2位、男性は3位です。この25年間の間に男性は4.83歳、女性は5.09歳も平均寿命が伸びており、内閣府の高齢社会白書によると2060年の平均寿命は男性84.19歳、女性は90.93歳になると予測されています。日本は世界有数の超高齢化社会となっており、これが葬儀の様式にも変化を与えています。従来の一般葬儀をやめて、ごく近い近親者だけで執り行う家族葬を選ぶ層の増加です。

なぜ平均寿命が伸びると家族葬が増えるのでしょう。かつてのお葬式は家族だけでなく、サラリーマンであれば所属していた会社、商業や第1次産業従事者であれば商売相手、また地域とのつながりという固い絆があり、そうした方々も含めたお別れの儀式という側面がありました。戦後間もない1960年ごろの日本人男性の平均寿命は65歳前後でした。現在の65歳前後は定年再雇用でまだ働いている世代です。昔は定年が早かったとはいえ、65歳であればリタイア後も会社や商売相手との付き合いが続いていることが多く、遺族もお葬式の連絡を取りやすかった時代でした。しかし80歳を超える平均寿命時代に突入している現代では、実際問題として、昔お付き合いや接点があった会社関係者や商売相手だった人を探すこと自体に無理があります。若いうちに亡くなるケースは別ですが、いわゆる大往生を遂げられた場合とか、高度医療の進歩によって非常に長い期間闘病生活を送った末の最期という場合は、いわゆる接点が消失してしまうのです。高齢化社会は団塊の世代以降に急増した核家族化によって消滅した大家族制度だけでなく、お葬式の形態も変容させつつあります。これは良い悪いという問題ではなく社会構造の変動であり、これが生み出すお葬式に対する価値観の変化でもあります。

現代でも地方の主要経済人や名士のお葬式に参列すると、驚くような豪華な祭壇や見渡す限り会葬者で埋まった広い会場、駐車場にずらりと並んだ黒塗りの高級車の列に驚くケースもありますが、こうした一大行事のような一般葬儀は少なくなっています。昔のお葬式は葬儀場ではなく、自宅で執り行うことは珍しくありませんでした。自宅に故人を安置し、お通夜から本葬まで、近所の人や会社関係者らが総出で準備を加勢したり遺族の面倒を見るということが普通にみられました。大家族主義の時代にはこうした風景は当たり前だったのですが、団塊の世代が社会の中心を担うようになり、人が地方から大都市に移動すると、必然的に大家族主義は廃れ、核家族化が進みました。こういう潮流になると、いわゆるご近所づきあいは疎遠になります。お葬式の場は自宅から葬祭場へ変わり、仕切るのは葬儀会社という形態になるのは経済原則であり、社会的要請でもありました。1990年前後からは、この流れがさらに変容し、多くの関係者が参列する一般葬儀だけでなく、ごく近親者だけで営む家族葬が増えていくというトレンドが生まれました。高齢化社会と家族形態の変化がお葬式の在り方にも一石を投じています。